ダーク・モカ・オレンジを早く戻してくれ。
昼過ぎに立派なバスターミナルに到着。バス車内でボストンでのair bnbの宿の場所を調べようと思ったが、車酔いをしたので何もできなかった(バス車内にはフリーWi-Fiがある)。バスターミナルにもフリーWi-Fiがあるのだが、接続があまり良くないのでスターバックスを探しに外へ出る。
本当にスターバックスがあったので爆笑してしまった。さすが資本主義国家、風情がない。
スターバックスでGoogleマップを起動する。現在地と目的地の住所を入力すれば、すぐにルートが出せる。距離やかかる時間を教えてくれるのは当たり前、バスの出発時刻や乗るべきバスの番号まで、こと細かに教えてくれる。アメリカに来てから道に迷ったことがない。さすがグーグル、風情がない。
air bnbを利用するので、宿の場所はおのずと郊外になってしまう。ただ、どこでもバスが通ってるのでほぼ問題がない。ルートを頭に叩き込んで、いざボストンでの住処、アヴァとジョシュの家へ向かう。
バスを乗り継ぎ、問題なくアヴァとジョシュの家に到着。場所はメドフォードという閑静な住宅街。
これがアメリカの住宅街か......
道が広い。家が大きい。庭がある。木が植えてある。当然ながら、ニューヨークとは大違い。
アヴァからは事前に連絡があった。
「あなたがチェックインする頃私は家にいないから、鍵を開けて勝手に入っていいわよ。」
誰もいない、知らない人の家に入る。不思議な感覚。置き手紙があったので自分の部屋はすぐに分かった。
これで一泊5000円。悪くない。バスの移動はやはり身にこたえる。まずは荷物をおいて一息。そして服を部屋着に変えて、荷物の整理をする。これから4日間、ここが僕の家になる。
「......カチャカチャ、カチャカチャ。」
うん?誰もいないはずの下の階から、食器の音が鳴る。ここで一瞬、ポルターガイストという現象を想起する。日本の幽霊はちょっぴり怖いが、アメリカの幽霊なら大丈夫。アメリカ人に、恨みを買うことをした覚えは無い。
一階に降りると、若い男性が水を飲んでいる。幽霊では無い。
「やあ、俺はテム。ジョシュの友達で、ここに居候してるんだ。ゆっくりくつろいでくれよ。」
アメリカ流の握手をして二階へもどる。3泊4日の宿泊で、テムと会ったのはこれっきり。
夜になったらアヴァとジョシュが家に帰って来た。2人とも40歳くらいの夫婦。アヴァはレストランでオーナーをしている。ジョシュは翻訳の仕事をしているユダヤ人。2人は本当に仲が良い。いつも2人で話をしている。
「日本に行きたいわ。そしたら『うな重』を食べたいの。」
どこで「うな重」なんて知ったんだろうか。あの味が果たしてアメリカ人の舌にあうのだろうか。よくアメリカ人はこう言う。
「日本食は最高だぜ。寿司、刺身、天ぷら、みんな本当に美味しいよな。」
アメリカ人に一言、言わせて欲しい。アメリカの日本食はたいていの場合、中国人もしくは韓国人がアメリカ人向けにつくったプラモデルであって、本当の日本食では無いんだと。
日本食がアメリカで人気であることは誠にけっこう。ただし、安売りされて欲しくない。まあ、いち日本人学生が偉そうに言えることでもないのだけれども。