古人曰く勝って兜の緒を締めよと
Heaven gives the crown of victory to those only who by habitual preparation win without fighting, and at the same time forthwith deprives of that crown those who, content with one success, give themselves up to the ease of peace. The ancients well said:
"Tighten your helmet strings in the hour of victory."
元が良いからか、こちらもなかなか悪くない。
1867年の明治維新によってなんとかハリボテの国民国家をつくりあげた日本が、当時一生懸命行った仕事の一つが、「外国語の書物を日本語に翻訳すること」であった。その後たった数十年で、今度は「日本語を外国語に翻訳させる」ところまで持って行った。この事実には純粋に感動してしまう。
面白いことに(人によるところではあるが......)、話はここで終わらない。
秋山真之は名文家で、このような見事に人を感動させる軍事的文章をつくったとされる。もう一つ例を上げるとすれば、それは日本海海戦で日本の連合艦隊が出撃の際に発したこの文章である。
「本日天気晴朗ナレドモ波高シ」
司馬遼太郎は、こういった文章こそ昭和の戦争で日本を誤らせた一つの原因だと言っている(あくまで小説の中で)。確かにこの文章は文学的感覚からいえば名文なのかもしれない。ただ、戦争に文学はいらない。必要なことは状況を正確に、素早く伝えること。秋山のこういった文章から、例えばただの全滅を全滅と言わず、美しく玉が砕けるように「玉砕」と呼んで、あたかも素晴らしいことかのように賞賛するようになったのだと。
こんなこと学者は絶対に言わないし、というか言えないのだろうけれども(こういう点を考えると、学者って本当に難しい、苦しい世界だなと思う)、実際には少しは影響があったんだと思う。
欧米から笑われ、欧米に見習い、少しは欧米に認められるようになり、かと思うと今度は欧米に挑み(意見が分かれるところではある)、欧米に徹底的に破壊された国。
果たして今は......? これからは......?